1.気候変動ってなに?
地球では、太陽の恵みを受けながら、風や海水の流れによって生まれる色々な気候の下で、様々な生物が育まれています。気温に注目して、世界全体の1年ごとの平均気温を長い時間に渡ってみてみると、高くなったり低くなったりを繰り返しています。これは、地球の気候の「ゆらぎ」ともいえる自然変動によるものです。しかし、下の「図1」を見ると、170年の間に、少しずつ気温が上がってきている様子が分かります。この長期的な気温の上昇を、地球温暖化と呼んでいます。
地球が温かくなるのはなぜでしょうか。原因の1つは、私たち人間がモノを作ったり、飛行機や車で移動したりするときに、工場や乗り物から出る二酸化炭素(CO2)が大気中に熱を閉じ込めてしまうことです。地球が温かくなることで、氷が解けたり、風や海水の流れが変わって、雨の降り方が今までとは違う様子を見せることもあります。このように気候が変わることを「気候変動」といいます。
2.気候変動で私たちの暮らしはどう変わるの?
人間活動による地球温暖化は、本来、気候が持っていた自然な振れ幅や周期にも影響をもたらすおそれが指摘されています。平均気温の上昇だけではなく、極端な高温や、まれにしか起きないとされる異常気象の頻度は、1950年代以降、世界の多くの地域で増加しています。
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図2のグラフを見ると、日本近くの海面の水温が上がっているよ。海の水温が上がると、何がおきるの?
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海の水温が上がると、海の表面からよりたくさんの水が蒸発するんじゃよ。そうなると、空気中の水蒸気の量が増えて、雲ができやすくなるんじゃな。こうやってできた積乱雲が大雨を降らせるんじゃよ。日本に来る台風も、勢力が衰えずに強い勢力を保ったままで上陸することが増えてきそうじゃ。2014年8月に広島で大雨による大きな被害があったが、この時からよく聞くようになった「線状降水帯」(発達した積乱雲が列をなし、強い降水をともなう雨域)も、こういう仕組みで増えているんじゃ。それと、水蒸気も温室効果ガスなので、温暖化をより強くしているんじゃ。
3.京都でも気候変動の影響があるの?
京都でも過去100年の間に平均気温が約2度上昇するなど(図3)、地球温暖化の影響が確認されています。また、過去50年の間に、夜間の気温が25度を下回らない熱帯夜の日数は18日増加し、日中の最高気温が35度以上となる猛暑日も5.5日増加しました。夏だけではなく、冬にも影響がみられ、日中の最低気温が0度を下回らない冬日は、過去50年の間に37.5日も増加しています。
(京都地方気象台の資料より)
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わあ、京都にも確実に地球温暖化の影響が出ているんだね。これからも気温はどんどん上がっていくの?
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このままなにもせんままじゃと、2081年~2100年の世界の平均気温は、1850年から1900年の間の気温と比べて約4.4℃も高くなる。厳しい地球温暖化対策をとった場合でも約1.4℃上がってしまうようじゃ。(IPCC第6次評価報告書)
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んー、どうなるのか、よくわかんないや。
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例えば、21世紀の終わり頃になると、1年あたりの猛暑日(最高気温が35℃以上の日)が20世紀の終わり頃と比べると、だいたい50日増えて65日くらいになるんじゃな。熱帯夜(夜間の最低気温が25℃以上の日)もおよそ65日増えて、85日くらいになると予測されているんじゃよ。そうなると、1年のうち2か月以上は最高気温が35℃を超えることになるんじゃ。
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35℃を超えたら、外に遊びにいけなくなるよ。2か月も!?
※春と冬は発生回数が少ないため表示していません -
それだけじゃないぞ。滝のように強い雨が降る回数※1も増えて、1年間で2倍以上になってしまう。そうかと思うと、雨の降らない日※2も増えてくるんじゃよ。とんでもない気象が増えるんじゃ。
※1:1時間降水量50mm以上の短時間強雨
※2:日降水量が1mm未満の日 -
すごく暑くなって、激しい大雨がいっぱい降ったかと思ったら、全然降らない年も増えたり・・・。そしたらどんな影響が出るんだろう。
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そうじゃのう。農業への影響は深刻で、ひどい暑さで米やお茶、果物の味が落ちたり、実が付かなくなったりしておるな。台風で農作物が被害を受ける例も増えておるし、強い雨とそこから起こる土砂崩れなどの災害も増えておる。京都では2018年に7月豪雨や台風21号で大きな被害が出たんじゃ。ほかにも、夏に熱中症になる人が増えているのも深刻な問題じゃ。
4.私たちは気候変動にどう対処していけばいいの?
これまでは、進行する地球温暖化を何とか止めようとする努力が世界各地で行われてきました。具体的にはCO2をはじめとする温室効果ガスの排出を減らそうとする試みです。これを「緩和策(かんわさく)」と呼んでいます。日本も2020年10月、2050年までに温室効果ガスの排出を実質的にゼロ※とすることを宣言しています。京都府・京都市は、2030年までに2013年比で40%以上削減し、2050年には実質ゼロとすることを宣言しています。
※ 「実質的にゼロ」とは、森林などによるCO2吸収などと合わせて、全体として温室効果ガスを増加させないことを意味します。
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地球温暖化を抑えていくためには、世界全体で温室効果ガスを出さないようにすることが大切なんだね。でも、もうすでに今までにないほどの強い台風や大雨にあったり、農作物がとれなくなったりしているんだから、これからは食べ物が少なくなったり、住むところを無くしたり、そんなことがいつでも起こりそうだよね。熱中症になる人も増えているのも心配だなあ。これからどうしたらいいんだろう。
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まったくじゃ。心配じゃな。もう気候は昔とは違ったものになってしまっとる。それに、これから温室効果ガスを全く出さないようにできたとしても、温暖化はすぐには止まらないといわれているんじゃよ。そうなると、わしらが安全・快適に暮らしていくためには、暮らしや社会の仕組みを温暖化に合わせてどうにか変えていくことを考えていかねばならん。これを、「適応策(てきおうさく)」というんじゃよ。
5.京都における適応策の推進に向けて
気候変動の影響は、私たちの暮らしの様々なところに現われています。気温の上昇による農作物への影響や、大雨などによる自然災害、熱中症にかかる人の増加といった健康への影響などがあります。
地球温暖化が進まないように温室効果ガスの排出量を減らす「緩和策」に加えて、これからの時代は、すでに起こりつつある気候変動の影響による災害から人々の暮らしや町、自然などを守る「適応策」にも力を入れることが大事です。
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緩和策で温室効果ガスを出すことを止めても、温暖化はすぐには止まらないんじゃよ。気候が変わっていくことで、人々の暮らしがどんどん苦しくなっていく。今のことだけを考えて、適応策をとったとしても、未来を生きる子供たちに安全・快適な暮らしを残していけるものじゃろうか。人類は自分たちの都合で、この地球の気候を変えてしまったんじゃ。いまの地球の上で、子供たちが将来を心配しなくてもいい、そんな未来を用意する。そのためにはわしらはどう考えて、なにをするのが必要じゃろうか。人は自然の中に生きておる。今までのように自然をないがしろにして生きていけるもんじゃろうか。人がどう自然と関わっていくのか、その新たなかたちを探していくことが適応策なんじゃよ。
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そうかあ。地球温暖化を考えるってことは、僕たちが毎日生活している上で、どう自然を考えるかということにつながっているんだね。気候変動って地球全体だけの問題かと思ってたけど、僕たちの住んでいる家や学校のある町、その隣の町、その隣の隣の隣も・・・ずーっとつながってるところが、一緒になって考えていく問題でもあるんだね。
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そのとおり。気候変動の影響は地域の自然や社会の状況によっても変わってくる。
そこで、京都でどのような気候変動の影響が出ているのかを調べて、京都における適応策を考え、発信していく拠点として、「京都気候変動適応センター」を立ち上げたんじゃ。
分かったことはこのホームページでどんどん発信していくから、これからも見にきてほしい。わからないことがあったら、いつでも聞いてね。
地球が温かくなるのは、CO2が増えているせいなんだね。
地球温暖化の原因になる気体を、温室効果ガスというとる。温室効果ガスにはCO2の他にもいくつかあるんじゃが、一番影響が大きいのがCO2で、石油や石炭などを燃やした時に出てくるんじゃ。人間は長いこと、電気やガスや車のエネルギー源を石油や石炭に頼ってきたから、大気中のCO2が増えたんじゃよ。
じゃあ、石油や石炭を使っていなかったら、気温は上がらなかったの?
良いところに気付いたのう。さっきのグラフの水色のところ(人間の活動の影響を入れずに推定した気温)とオレンジ色のところ(人間の活動の影響を入れて推定した気温)が、1900年頃から離れていっているじゃろ。ちょうどこのころ、工業化が進んで、人間がエネルギーを大量に使いだしたもんじゃから、CO2を出す量が増えていったんじゃよ。人間の使うエネルギーの量が増えなかったら、今の気温は、水色の範囲に入っていたはずなんじゃが、実際は、黒い線(観測された気温)のように、気温は上がってきているんじゃ。