KCCACメンバーコラム

この夏の異常な暑さについて 2024.8.7

京都気候変動適応センター センター長 安成 哲三

 

KCCACセンター長の安成です。

このところ、異常に暑い日々が続いていますので 臨時の「安成通信」を流します。

本日8月2日の京都市の最高気温は39℃が予測されています。 (これは、日本国内で最も高い予測です。) これから先、1週間程度、場合によっては、8月中旬のお盆明け頃まで この暑さが続く可能性が、気象庁から警告されています。 7月の日本全体の月平均気温も、気象庁が統計を開始した1898年以降で 昨年7月を更新して最も高かった月となったことが今日、発表されました。
熱中症警戒アラートは連日出されていますが、不要不急の外出や戸外での長時間の活動は極力控えてくださるよう、お願いします。 また、外出時には、十分な飲み水の携帯をお忘れなく、お願いします。

 

さて、なぜこんな高温になっているのか。 私の現時点での診断を書いてみます。

今回の夏の暑さは、普通の夏の小笠原(太平洋)高気圧の張り出しに因る暑さとはかなり異なることに気がつきました。約1週間前、強い台風3号が沖縄諸島を襲ったあと、台湾を経て中国南部に上陸したことを覚えておられるかと思います。台風はそこで崩れましたが、そのまま中国南部から東南アジア、南シナ海は強い対流(雲)活動が続き、洪水や土砂崩れなどの被害が中国南部を中心に続いています。
添付の図は、気象庁異常気象分析web資料で作成した最近5日間のモンスーンアジア地域の水蒸気の流れ(左図)と850hPa(上空約1500m)で観た雨の分布(青色)と気圧配置(右図)です(注)。

 

 

(注)これらの図は、非公開の気象庁異常気象分析ウェブから提供されている資料の中で、「鉛直積算水蒸気フラックスとその水平収束発散(実況)」と「850hPa流線関数,OLR . 波の活動度フラックス(実況)」のデータによる7月26日から30日の5日間平均の図を、安成が特別に許可を得てダウンロードした図です。商業目的などへの無断転載はできませんのでご留意ください。

 

左図では、インド・東南アジアから中国沿岸を北上した水蒸気の流れが、先日まで東北地方に大雨をもたらしていたことがよくわかります。西日本を中心とする日本列島には、高気圧(右図)が横たわり、この水蒸気の流れ(大気の川とよばれています)をブロックしていることもわかります。この高気圧は、新聞やテレビの天気予報に出てくる地上天気図ではあまりはっきりしませんが、上空になるほど顕著で上空1万メートル以上の高さにまで達するタワーのように背の高い高気圧です。

このような高気圧は、中国南部から東南アジア、ベンガル湾へと広がる強い対流活動(降水活動)によって形成された高気圧で熱帯アジアからインド洋での対流活動が続くかぎり、持続する可能性が高いです。

もう一つ、これまでの夏と大きく異なるのは、日本列島周辺の海面水温が、昨年冬頃からずっと高温のまま続いており、日本列島付近の気温をさらに高くしています。この高い海水温の海は、大気に多量の水蒸気をもたらすため、大気の状態が変われば、逆に、東北を襲ったような豪雨をもたらす条件に様変わりする可能性があります。

京都市の気温が高いのは、海からの海風などが入ってこないことに加え、内陸で日照りが続くと、土壌が乾き、地面温度を益々高くする効果が加わるからです。都市全体でのエアコン使用は、住宅の外の気温をさらに高くするという都市のヒートアイランド効果も加算されることにもなります。

 

アジア大陸周辺の太平洋からインド洋域の海面水温は、年々上昇しています。特に、日本列島周辺の海面水温は世界的に見ても、顕著な上昇を示しています。これは「地球温暖化」の現れの一環と考える研究も多くなっています。だとすると、今年のような夏は、常態化してしまう可能性もあります。